◆岡山大学病院周産期オープンシステム◆

大学病院でお産が出来ます!


《周産期オープンシステムとは》

 お産は陣痛がはじまると刻一刻とお母さんと赤ちゃんの状態が変化するため、一定のリスクが伴います。
特にお母さんが何らかの合併症をもっている時には、その危険性が増加します。このため厚生労働省が現在展開している「健やか親子21」という運動でも、妊娠・出産に関する安全性と快適さの確保のために高次の病院のオープン化に取り組むことを掲げています。
 岡山大学医学部・歯学部附属病院ではこの趣旨に基づき、より安全なお産を提供するために産科病棟の一部をオープンベッドとし、近くの病院・診療所で妊婦健診をうけていた皆さんに、分娩は産科、小児科、新生児集中治療室(NIUC)、小児外科、小児神経科、麻酔科などの設備、スタッフの充実した大学病院で行なっていただくことにより、より安全にお産をしていただくことを目指しています。これが周産期オープンシステムです。

《周産期オープンシステムの実際》

●妊娠20週頃までに一度、かかりつけの病院・医院の紹介状をもって大学病院の産婦人科を受診してください。最初の受診の際は、月・水・木・金の9時から12時の間にお越しください。診察をうけ、分娩予約をしていただいたあと、助産師や担当職員が必要事項を説明し、分娩案内をします。
●妊娠中の検査結果は、紹介元の先生に紹介状に記載していただくため、同じ検査を繰り返すことはありません。
●一度、大学病院を受診したあとは紹介元の病院・産婦人科医院で健診を受けてください。
●妊娠36週以降は、大学病院で健診していただきます。
●妊娠中に妊娠高血圧症候群、糖尿病、前期破水、胎児発育遅延などの合併症がおこってきた場合は、紹介先の先生と相談し、大学病院での管理に移ります。
●分娩予約をされた妊婦さんが、妊娠中何か問題がおこった場合に紹介元の先生が何らかの理由で都合の悪い場合は、いつでも大学病院を受診できます。
●大学病院で行っている母親学級、両親学級などに自由に参加できます。
●紹介元の先生に分娩に立ち会ってもらうかどうかをよく相談しておいてください。紹介元の先生が分娩に立ち会われる場合は、あなたが入院されたときに連絡をしますので、分娩や帝王切開に立ち会ってもらうことができます。紹介元の先生が診察中などで都合の悪い場合は、大学のスタッフが責任をもって分娩のお世話をします。
●産後の一ヶ月健診は、大学病院でも紹介元の先生のどちらでも受けられます。


《周産期オープンシステムにより患者さんが得るメリット》

●現在診察していただいている先生に分娩に立ち会ってもらうことができます。
●妊婦健診は近くの病院・産婦人科医院で手軽にうけることができます。
●設備やスタッフの揃った大学病院で分娩することにより、分娩時に何か起こった時も、多くのスタッフや関係する科の先生がいるので安心です。
●妊娠中も産後も何か起こった場合、紹介元の先生、大学病院のどちらでも受診できるので安心です。

第24回岡山県母性衛生学会シンポジウム「どうする?岡山のお産」

第24回岡山県母性衛生学会抄録('07-12-08)

(井上産婦人科クリニック 井上 隆)

【当クリニックの概要】

分娩施設を持たない所謂「ビル開業」の診療所。場所は岡山市の中心街で 大学病院からは北へ1.4kmと比較的近い。医師は一人で「産婦人科・内科」を標榜。スタッフに助産師はいない。

 

【当クリニックの妊産婦の概要】

分娩希望の妊婦は全員 紹介先の分娩施設での出産となる。妊婦健診者には妊娠初期より「どういうお産を どういう施設でしたいか?」を考えてもらい パンフレットを渡して 情報提供・説明をし 施設決定をしてもらう。決定要素はスタッフ・設備の充実度、費用、距離、口コミ 等々である。迷う妊婦には施設案内・下見をさせて頂き決定する場合もある。(この場合案内者の対応が大きく影響する。)施設が決定すれば 施設の方針に従い 情報提供書(紹介状)を持参で受診する。 岡山大学附属病院の周産期オープンシステムの場合は 妊娠20週までに1回受診、その後は当クリニックで妊婦健診、妊娠10ヶ月以降は大学病院で健診 そしてお産となる。 当クリニックでは 「全例分娩時立ち会い 産後入院中に2~3回は 診察に出向く。」ことを目標にしている。 産後健診も希望者には行っている。

 

【分娩紹介先】

 平成18年4月1日より平成19年11月30日までの妊婦健診者は86名であった。(健診中の妊婦は分娩施設に紹介済の者のみを対象とした。) 地域別紹介先は岡山市内:49例(57%)、岡山市外:10例(11.6%)、岡山県外:25例(29.1%)、不明:2例(2.3%)であった。 岡山市内の紹介分娩施設の内訳は 岡山大学病院:13例(26.5%)、総合病院:9例(18.4%)、中堅病院:15例(30.6%)、医院:13例(26.5%)、助産所:0例(0%)であった。

 

【オープンシステム利用者】

 ・内訳は分娩終了者が9名 妊婦検診中が4名 年齢分布は23~40才、初経産別では 初産8名 経産5名であった。  ・分娩終了者の9名の分娩様式は正常分娩6例 予定帝王切開術3例であり 帝王切開術は3例とも執刀させて頂いた。  ・立会いは9例中8例であった。1例は連絡方法の不手際で 残念ながら立ち会えなかった。昼の分娩の1例は当クリニックの診察を中止して立ち会った。・時間帯は予定帝王切開術の3例を除くと 6例中4例が深夜帯であり、朝1例、昼1例であった。  ・立ち会った症例は すべて絶妙のタイミングでスタッフから連絡を頂いたお蔭で 分娩までの待ち時間もわずかで 誠にスムースだった。

【利用者の評価】

 ・2つの病院の「いいとこ取り」をさせてもらった気がする。いろいろな意味で安心でした。よく知っている井上先生がいてくださるか、そうでないかは気持ちが全然違う。(M.A様のコメント)・待ち時間が少ない。(アンケートより)・親切な対応。(アンケートより)・個別の対応をしてもらえる。(アンケートより)・健診の時間や日にちの融通がきく。(アンケートより)・母親学級がない。(アンケートより)

 

【オープンシステムのメリット・デメリット】

●メリット ・リスクの軽減‥‥ハイリスク妊婦,急患の受け入れ先の確保・妊婦検診受診者数の増加‥‥経営の安定・生涯研修の一助になる。

◆デメリット ・特になし。(外来診察中に分娩,手術となった時の対応に悩む程度。)

 

【終わりに】

・周産期オープンシステムを紹介・説明することにより 妊婦はシステムに興味を示し、大学病院の「敷居が高い」「モルモットにされる」というイメージは払拭されていった。システムを啓蒙していけば利用妊婦は増えると思われる。

・周産期オープンシステムは 分娩施設を持たない産婦人科診療所の当クリニックにとっては 「安全・安心」な理想的なシステムである。

・周産期オープンシステムがよりよく機能する為には 患者・行政・医療従事者の3者が お互い敵対関係で無く 「共存共栄」の意識を持って具体的に行動することが必須である と考える。

2016年07月31日